広州におけるアパレル産業の重要性は、皆さんもよくご存じのことかと思います。アパレルの買付に本格的に携わるのであれば、その基本となる情報や歴史をしっかり理解することが欠かせません。
例えば、衣料用生地の種類や品質レベル、各素材の特性や欠点、また基本となる服本体にアクセントを加えるための副資材の使い方などについて深く知ることが、実際に既製品を購入したりオーダーメイドしたりする際に、コスト面でもデザイン面でも大きなアドバンテージとなります。
こうした知識を身につけることで、メーカーとの効果的なコミュニケーションが可能となり、良好な協力関係を築くための強力な交渉材料を得ることができます。
そこで今日は、アパレルの買付をより深く理解したい方々のために、広州の服飾生地と副資材市場についてご紹介したいと思います。
服飾生地や副資材の市場と言えば、広州の「中大エリア」を外すことはできません。「中国の紡織は華南にあり、華南の紡織は中大にあり」と言われるように、広州の中大繊維商圈(中大エリア)は、中国最大の繊維・副資材取引の中心地として、中国においてアパレル関連商材を購入するには最適の場所です。
それでは、中大紡織商圈(中大エリア)の概要についてご説明させていただきます。
中大繊維商圏
1.「中大エリア」全体の紹介
中大繊維商圏(中大エリア)は広州市海珠区に位置しており、中国の名門大学の一つである中山大学(中大)に隣接しています。中国最大の生地市場の一つとして、その規模の大きさと取り扱い品目の多さには、目を見張るものがあります。1980年代に布生地の露店市場としてスタートし、30年以上にわたる発展の段階を経て、現在では世界最大規模の繊維・副資材の取引センターとなっています。
エリア面積は約5平方キロメートルに達し、ピーク時には65もの布地市場が集まっていましたが、現在でも59の市場が安定した営業を続けており、入居する商店の数は約2.5万軒に達しています。年間取引額は2,000億元を超え、中国国内取引額の約3分の1を占め、「中国のミラノ」とも称されています。
中大繊維商圏(中大エリア)では、原材料の調達から生産加工、物流配送まで、サプライチェーン全体をカバーしており、商いに直接従事している人数は10万人を超え、それ以外にも関連産業に携わる雇用数は200万人にも及びます。世界中のファッションブランドやデザイナー、バイヤーにとって、欠かせないリソース拠点であり、起業家にとっても見逃せない「服飾ビジネス成功のための黄金地帯」となっています。
このエリアでは、主に生地と副資材の2大カテゴリーの商品を取り扱っています。生地には、ニット生地、化繊生地、ウール生地、シルク生地、混紡生地、綿織物、麻織物、服飾向け副資材専用の布やインテリア用の布などが含まれております。また、副資材には、ボタン、ラインストーン、リボン、レース、ベルト、ファスナー、装飾金具など、10万種類以上の商品が揃っております。
中大繊維商圏(中大エリア)の取引相手先は華南地域にとどまらず、中国国内の他地域や世界各国・各地域へと広がっており、中国国内外で広く認知されている繊維関連商材の専門卸売市場と行っても過言ではありません。

2.「中大エリア」に含まれる主要市場
中大繊維商圏(中大エリア)は非常に広い規模を誇っており、その中にはいくつかの主要な市場が含まれています。代表的な市場としては、「広州国際軽紡城」、「広州長江国際紡織城」、「中大九州軽紡広場」、「中大五鳳東場」、「瑞康服装配料城」などがあります。それぞれの市場には、独自の特徴や位置付けがあります。

その中でも、特に「広州国際軽紡城」は中大繊維商圏(中大エリア)の中心的な存在ですので、今回のコラムでは、この「広州国際軽紡城」を重点的にご紹介したいと思います。
広州国際軽紡城




1. 歴史及び位置付け
2005年に営業を開始して以来、「広州国際軽紡城」は中国において最も国際的な影響力を持つ繊維および副資材の展示型ビジネスプラットフォームとしての地位を確立しており、中国紡績工業連合会からは「繊維・アパレル創意設計試験区」として高く評価されていますが、その他にも「広州国際軽紡城」が中大繊維商圏(中大エリア)の中心的な位置を占めている理由は以下になります。
① 規模の大きさ
「広州国際軽紡城」は、アジア最大を誇る単一建築面積の近代化された繊維製品の卸売市場であり、その総建築面積は30万平方メートルにのぼり、入居店舗数は4000店舗以上に及びます。国内外から3000以上の生地や副資材のブランドが集結し、業界の中心的な役割を果たしています。
② 品揃えの豊富さ
「広州国際軽紡城」は、ハイエンド、ミドルレンジ、ローエンド向けの生地や副資材、さらにはホームテキスタイルなど、幅広い製品カテゴリーを取り揃えています。それにより、繊維及び服飾業界をはじめとした様々な顧客のニーズに応えることができ、国内外のバイヤーにとって欠かせない存在となっています。
③ 交通の利便性
広州市海珠区に位置しており、地下鉄や主要な交通幹線に近いため、アクセスが非常に便利です。これにより、海外からのバイヤーやビジネスパーソンでも簡単に訪れることができ、買付・商談をスムーズに行うことができます。
④ 近代化された施設
「広州国際軽紡城」は、先進的な物流システム、倉庫スペース、金融機関、展示施設などが整備されており、商取引の効率性を高めています。これにより、迅速なビジネスが可能となり、バイヤーや取引先からの厚い信頼を獲得しています。
⑤ 業界への影響力
定期的に展示会を開催しており、国内外のバイヤーを引き寄せることで、業界内の交流を促進しています。これらの展示会は新たなビジネスチャンスを生み出す場となっており、商業活動における重要なプラットフォームとして機能しています。
⑥ ブランド効果
「広州国際軽紡城」は、業界のベンチマークとして高いブランド力を誇り、その影響力は非常に強大なものがあります。また、顧客からの信頼度も高く、毎年50万人以上の国内外からのバイヤーが訪れています。さらに、ZARAやH&Mなどの国際的な知名度を誇る企業とも多くの取引を行っており、これらの理由により、更に市場の信頼性を高めています。
以上のように、いくつもの魅力的な特色を持っていることで、「広州国際軽紡城」は国内外の繊維および副資材のバイヤーにとって最もプライオリティの高い仕入れ先となり、中大繊維商圏(中大エリア)において圧倒的な主導権を握る存在となっています。
2. 地理的立地と交通アクセス
住所: 広州市海珠区新港西路144号
• 地下鉄: 8号線「中大」駅D出口より徒歩10分
• 空港/高速鉄道駅: 広州白雲国際空港から車で1時間、広州東駅から車で30分
• 物流ネットワーク: 珠江デルタ高速道路網に隣接し、深圳塩田港、広州南沙港などの国際港への貨物配送が迅速
フロア案内と営業範囲

①地下1階

副資材の各カテゴリーごとに専用ゾーンがあり、以下のとおり、各エリアにはさまざまな製品を取り扱う店舗が並んでいます。
• 1-4街:こちらのエリアでは、ボタン、ラインストーン、転写プリント、ベルト、ペンダント、刺繍、ブランドタグといった衣類やアクセサリーに欠かせないカスタムアイテムを幅広く取り扱っています。お客様のニーズに合わせたカスタマイズにも対応しており、多様なデザインの商材が揃っています。
• 5-8街:このエリアでは、レース、リボン、ゴム、肩パッド、ブラパッドなど、主に衣類の補助資材やアクセサリー関連の商材が揃っています。デザイン性に富んだアイテムが多く、ファッション業界関係者からの高い需要があります。
• 9-18街:ここでは、ファスナー、金具、バックル、チェーン類など、衣料品やバッグ、靴などに使用される金属系副資材を中心に取り扱っています。デザインだけではなく、耐久性に優れた製品が多く、バイヤーからの確固たる信頼を得ています。
これらのエリアでは、多種に及ぶ副資材が豊富に取り揃えられており、衣料品やアクセサリーの製造に欠かせないアイテムが一堂に会する場所となっております。
②1階

• A、B、C、F区:これらのエリアでは、ニット類をメインに取り扱っており、無地生地やプリント生地、さらにはトレンチコート用のギャバジン生地など、さまざまな種類の生地が揃っています。特にニット素材は着心地や伸縮性に優れた製品が多く、幅広い用途に対応可能なアイテムが豊富です。
• 中庭一条街:このエリアでは、織物やシフォン製のプリント生地を取り扱っており、軽やかで華やかな印象を与えるプリント生地が豊富に取り揃えられています。ファッション性が高く、特にドレスやブラウス、スカートなどに使用されることが多い素材です。
• E区、D区:こちらのエリアでは、麻生地、トレンチコート用のギャバジン生地、ダウン生地など、ニットと織物の両方を網羅しています。特にファッション性が求められる生地や、季節感が求められるアイテムに適した生地が揃っており、多様なニーズに応え得るラインナップになっています。
これらのエリアでは、様々な種類の生地を取り扱っており、特にファッション業界のバイヤーにとっては、素材選びの際に非常に役立つエリアになっています。
③2階〜4階


こちらのエリアでは、主に高級生地を取り扱っており、以下のような製品が並んでいます。
• ニッチブランドの生地
• デザイナーズ生地
• オリジナル生地
• 輸入生地
④5階〜6階

こちらのエリアには、既製品の展示スペースが多く設置されており、実力派の業者が集まっています。
⑤7階

「広州国際軽紡城」には、サービスセンター、銀行、検査機関、飲食店など、さまざまな施設が入居しています。
また、「広州国際軽紡城」は、フロアごとに異なる営業スタイルで展開されており、大きく2つのエリアに分かれています。一つは地下1階の副資材エリア、もう一つは1階から6階にかけての生地エリアです。
今回、私たちはこの2つのエリアに注目し、実際に商品調査を行いました。今回の調査内容が、生地や副資材の購入を検討されている皆様の参考になれば幸いです。
それでは、まずは副資材エリアから詳しくご紹介させていただきます。
副資材エリア
地下1階では、多種多様な副資材を取り扱っています。これら副資材への基本的な理解を深めるため、種類ごとに素材や最低発注数量(MOQ)などの基本情報を調査しましたので、下記をご参考ください。
尚、単価については記載しておりませんが、弊社にお問合せいただけましたら、可能な範囲でお調べさせていただきます。






上記ご紹介した商品を含め、市場内で取り扱われているすべての副資材については、各店舗でサンプルを取り寄せることができます。商品によってはサンプル代が発生する場合もありますが、多くの店舗では無料でサンプルを提供しているので、ぜひ遠慮せずにお問い合わせいただければと思います。
副資材のご紹介は以上となりますが、続きまして生地エリアについてのご説明に移らせていただきます。
生地エリア
初めて生地を扱う方や、これまでに生地を仕入れた経験のある方々に向けて、「広州国際軽紡城」で購入できる生地をさらに詳しくご紹介できるよう、生地をジャンル毎に分けて分類しましたので、以下を是非ご参考ください。
1. 用途別分類
生地は用途に応じて、さまざまな種類に分けることができます。例えば、スポーツウェア用やドレス用、カジュアルウェア用など、各用途に特化した生地が数多く取り扱われています。

2.加工別分類
生地の加工方法によっても、特徴が異なります。プリント加工、刺繍加工、ウォッシュ加工など、さまざまな加工が施された生地があります。それぞれの加工によって、触感やデザイン、耐久性などが変わりますので、求める製品に合わせて選ぶ必要があります。

3.成分別分類
生地の成分によっても、品質や特徴が大きく異なります。例えば、コットン、ポリエステル、ウール、シルクなど、それぞれの素材ならではの特性があります。用途やシーズンに合わせて、適切な素材を選ぶことが重要になってきます。

4. 織り方別分類
生地は織り方によっても異なる特徴を持ちます。例えば、平織り、綾織り、サテン織りなど、それぞれの織り方が生地の風合いや強度、伸縮性などに影響を与えます。これらの織り方を理解して選ぶことは、製品の品質に直結する大きな要素となります。

また、最近売れ行きが好調な生地についても、下記ご紹介させていただきます。

織物生地については、具体的にどのようなものかを理解するために、添付画像をご確認いただけますと幸いです。

また、比較しやすいように、ニット生地の参考写真も合わせて添付させていただきますので、こちらもご覧いただければと思います。

市場内の多くの店舗では、布地の色見本を無料で提供しており、来場客は自由に持ち帰ることができます。もし、直接サンプルを入手したい場合は、遠慮せずに店員に確認してみてください。時々、店員があなたの業種や所属している会社について尋ねることがありますが、その場合は名刺を渡せば問題ありません。
以上の副資材と生地の各エリア紹介をご覧いただきますと、当市場で取り扱われている商品の種類や店舗の多さを実感いただけたかと思います。また、初めて訪れる方々のために、市場内にはフロア案内用の端末と有人対応のインフォメーションデスクが設置されています。具体的な説明は以下の内容をご確認ください。
フロア案内端末およびインフォメーションデスク
各フロアの両端にはフロア案内の端末(タッチパネル)が設置されており、フロアごとの店舗配置を視覚的に把握できます。また、生地の名称を直接検索することで、関連する店舗を素早く見つけることもできます。希望する店舗名を入力すれば、その店舗で取り扱っている生地の種類も一目で確認できます。初心者と常連客のどちらにとっても、効率的な購入が可能になっています。

有人対応をご希望の場合は、7階のインフォメーションデスクへお越しください。専門のスタッフが以下のサービスを提供しています。
• 商品に関する問い合わせ
• 交通案内
• 館内イベントの情報提供
さらに、応急処置用に簡易医薬品や裁縫セットも常備されており、お客様の緊急時に対応できるよう配慮しています。

ガイドサービスに加えて、市場内には飲食エリアも設置されておりますのでご紹介させていただきます。
飲食エリア
飲食エリアは主に7階E区に設置されており、全9店舗があります。
• 麺類
• バゲットサンド
• 湖南料理
• 炊き込みご飯セット
• 米線(ライスヌードル)
• 中国西北地方の郷土料理
• 煮込みスープセット
• 四川風酸菜魚(魚と漬物を煮込んだ鍋)
多彩な選択肢の中から、買付や商談の合間に美食を楽しむことで、心身ともにリフレッシュできます。

手軽で無難な選択肢をお求めの方には、4階E区にマクドナルドもあります。

軽食や休憩を希望する場合は、コンビニやカフェをご利用ください。
主な設置場所は以下の通りです。
• セブンイレブン: 地下1階8街付近、2階A区、3階E区、4階F区
• ローソン: 地下1階8街付近、2階B区、3階D区
• Luckin Coffee(瑞幸咖啡): 2階B区、3階D区
• Manner Coffee: 2階A区
• Calling(手作りレモンティー): 2階B区

大口の資金取引の利便性を高めるため、市場内の各フロアには複数の銀行支店も出店しています。下記にて具体的な出店エリア、及び、取り扱い業務の内容をご案内します。
金融機関
国内外のお客様がスムーズに現金取引ができるよう、館内には6つの銀行支店があります。
主要な銀行の出店エリア
• 中国銀行: 2階B区
• 建設銀行: 4階C区
• 交通銀行: 4階C区
• 工商銀行: 4階D区
• 農業銀行: 4階F区
• 民生銀行: 7階E区
外貨両替にも対応しています。各銀行によって、日本円から人民元への両替限度額が異なるため、ご注意ください。例えば、民生銀行では1人あたりの1日の両替限度額が100 US$、中国工商銀行では1人あたりの1日の両替限度額が1000 US$となっています。
ただし、銀行が準備している現金が不足する事態を避けるため、事前に両替の予約をされることをお勧めします。
国内外出張で市場を頻繁に訪れる方なら、フライトスケジュールを考慮して、出張荷物を携帯しながら買付・商談することがあるかと思いますが、実際には非常に不便ですよね。そんな時には是非、2階に設置されているコインロッカーをご利用ください。こちらに荷物を預けて、手ブラで快適に買付していただけます。
コインロッカー
コインロッカーは2階D区とC区の間に2か所設置されています。

① E6行李帮
• 小型ロッカー: 12個(リュックなどを収納可能)
• 中型ロッカー: 4個(20インチのスーツケースを収納可能)
• 大型ロッカー: 2個(28インチのスーツケースを収納可能)
• 営業時間: 09:00~20:00
• 料金: 5元/時間
② 小铁 XIAOIRON
• 小型ロッカー: 10個(リュックなどを収納可能)
• 中型ロッカー: 6個(20インチのスーツケースを収納可能)
• 営業時間: 09:00~20:00
• 料金:
• 小型ロッカー: 3元/時間、24時間で最大20元
• 中型ロッカー: 5元/時間、24時間で最大30元
さらに、より専門的なサポートを提供するため、市場内の7階には検査センターが設置されています。ここでは、商品に関する品質検査や技術的なサポートを受けることができますので、市場内では安心して取引を進めることができます。詳しい内容については、以下をご確認ください。
検査センター
中纺检测技术服务有限公司(中国紡織検査技術サービス有限公司)は、7階E区 にある「広州国際軽紡城」内で唯一の指定検査センターです。
当センターは、繊維製品の検査、品質基準および技術コンサルティング、業界情報の提供を統合した専門技術サービスのプラットフォームで、100項目以上の検査サービスを提供しています。


検査の流れ
- カスタマーサービスに相談
- サンプル送付
- 検査項目の確定
- 検査委託契約の締結
- 代金支払い
- 検査
- 報告書の発行
8. アフターサービスと技術サポート
製品の品質に対する確かな検査体制及び技術サポートを提供し、多くの利用者からの信頼を得ています。
まとめ
「広州国際軽紡城」のご紹介は以上となります。興味をお持ちのお客様は、ぜひ実際に足を運んでその雰囲気を感じてみてください。きっとご期待にお応えできると確信しています。アパレル業界の初心者から経験豊富なベテランまで、すべての方にとってインスピレーションと新たな発見が得られる場所となることでしょう。
当社のアテンドサービスや買付ツアーをご利用いただければ、市場に精通したスタッフがしっかりとご案内いたしますので、広い市場内でも道に迷う心配はありません。また、各店舗への商品に関する問い合わせや必要な情報収集も全面的にサポートいたします。
さらに、現地でのご案内にとどまらず、検品や商品のアフターフォロー、物流手配など、取引後のサポートも包括的に提供しておりますので、ぜひ当社へのご入会をお待ちしております。