「関税ってそもそもなんなの?」「関税についてはわかるけど計算方法がわからない…」
関税に対してそんな疑問を抱えている方は多いのでしょうか?
そんな不安を抱えたまま海外取引を進めると、申告漏れや計算ミスによる追徴課税、さらには法令違反による処罰のリスクも生じかねません。
本記事では、関税の基本的な仕組みから実務で気をつけるべきポイントまで、具体例を交えて分かりやすく解説します。さらに、申告漏れや計算ミスを防ぐための実践的なノウハウと、おすすめの専門業者についてもご紹介。
これらを理解すると、悩みが解決し自信を持って輸入取引を進められるようになります。
知識をつけて、ビジネス成功の一歩目を踏み出しましょう!
関税の基礎知識
海外から商品を輸入する際に必ず関わってくるのが「関税」です。少し難しい話になるのですが、関税制度は古代都市国家における手数料から始まり、現代では国際貿易における重要な制度として発展してきました。
特に日本では憲法第84条に基づいて厳格に運用され、「関税定率法」と「関税暫定措置法」という2つの法律によって具体的な内容が定められています。ここでは、関税の基礎知識についての歴史と目的を詳しく解説します。
関税の定義
関税は、国境を越えて移動する物品に対して課される特別な税金です。また、輸出入取引における最も基本的な制度でもあります。
計算方法は、下記3つの要素により決定されます。
- 物品の種類
- 輸入元の国や地域
- 輸入元の国や地域
具体的な税率設定は、日本の法律によって定められた国定税率と、国際条約に基づいて設定される協定税率の2種類が存在。
税率 | 説明 |
国定税率 | 関税定率法によって定められた基本となる税率。すべての輸入品に対して適用される可能性がある |
協定税率 | 協定税率は世界貿易機関(WTO)の加盟国間で結ばれた協定や、2国間の経済連携協定(EPA)などによって定められた優遇税率 |
上記で説明した、2種類の税率のうち、より低い税率が適用されるので、輸入者にとっては有利な制度設計です。
関税の目的
関税制度の主な目的は、国内産業の保護と市場経済の安定化という2つの重要な機能を果たすことです。関税は大きく分けて、国の税収を確保するための「財政関税」と、国内産業を保護育成するための「保護関税」という2つの種類があります。
先進国と発展途上国では関税の位置づけが異なり、発展途上国では国家収入の重要な財源として機能。例えば、一部の発展途上国では国家収入の50%以上を関税収入が占めているケースもあります。一方で先進国では、関税収入は国家収入の5%以下にとどまるのが一般的です。
日本の場合、産業保護の観点から関税率に明確な特徴があります。具体的には、国内農業の保護を目的として農産物には比較的高い関税率を設定し、国際競争力のある工業製品には低い関税率を設定しています。このような戦略的な関税率の設定により、国内産業の競争力維持と国際貿易の促進という2つの目的のバランスを取っています。
関税の仕組み
国際貿易における関税は、WCO(世界税関機構)を中心とした国際的な枠組みの中で運営されています。1952年に設立されたWCOには現在185か国・地域が加盟し、各国の税関制度の統一を推進。特に近年、グローバル化の影響で、国際的な協力体制の重要性は増しており、世界共通の商品分類システムや税率制度の整備が進められています。
ここでは、関税の仕組みについて、国際的な枠組みから日本の制度まで説明します。
国際的な関税制度
国際貿易の円滑化と標準化を実現するため、現代の関税制度は世界的に統一された枠組みの中で運営されています。そこで、中核となるのが、HSコード(統一システム)による商品分類制度です。HSコードは世界の貿易の98%以上で採用されており、国際貿易における共通言語。
WTO(世界貿易機関)加盟国間では、公平な貿易を実現するための共通ルールが設定されているので、関税制度に透明性があります。
また、国際社会における経済格差を無くすことを目的として、1971年から一般特恵関税制度(GSP)も導入。GSPは、開発途上国の経済発展を支援するための施策として機能しており、日本も制度開始当初から参加しています。
さらに、HSコードは5年ごとに見直され、2022年版が最新です。現代の貿易動向を反映し、電動自動車や再生可能エネルギー関連機器が追加されました。次回の改定は2027年予定です。最新情報はWCOや税関の公式サイトを確認してください。
世界税関機構(WCO)公式サイト
https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/classification/hs2022.html
日本の税関公式サイト
https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/classification/hs2022.html
関税の計算方法
関税額の計算は貿易実務において最も重要な作業の一つです。基本的な計算式は以下の通りです。
「課税標準(CIF価格+加算要素)×関税率」
課税標準は1,000円未満を切り捨て、最終的な関税額は100円未満を切り捨てます。これから関税の具体的な計算方法について、CIF価格の算出から実際の課税価格の決定まで解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
CIF価格の計算方法
CIF価格は関税の課税価格を算出する際の基礎となる重要な要素で、CIF価格は主に3つの構成要素から成り立っています。
要素 | 説明 |
卸売価格 | 輸出者から提示される卸売価格で、通常はインボイス(送り状)に記載された金額が基準 |
輸送運賃 | 商品を輸出国から日本までの港や空港まで運ぶために必要 |
保険料 | 輸送中の事故や損害に備える ※保険が付保されている場合にのみ加算 |
これら3つの要素を合計した金額がCIF価格となり、これを基に課税価格が算出されます。近年のグローバルなサプライチェーンの複雑化に伴い、これらの価格要素を正確に把握し計算することは、適切な関税申告において重要です。
課税価格の算出方法
課税価格の算出は、CIF価格を基準として複数の段階を踏みます。基本となるCIF価格に対して、商品の取引に関連する追加的な費用である加算要素を加えます。
具体的な加算要素は以下です。
- 商標やノウハウの使用に対するライセンス使用料
- 取引の仲介者に支払う手数料
- 輸入後に支払う値引き金額など
これらの金額が外貨建ての場合は、輸入申告日の週の前々週における為替相場の週間平均値を用いて円換算を行います。この際、為替レートの変動リスクを考慮しましょう。
最終的に算出された金額は1,000円未満を切り捨てて課税価格が決定されます。なお、加算要素の判断や為替換算の基準日の特定には専門的な知識が必要となるため、不明な点がある場合は税関に事前に相談するのがおすすめです。
関税率の確認方法
関税率の確認は輸入取引において最も基本的な作業の一つです。実際の関税率は輸入統計品目表(実行関税率表)で確認することができます。輸入統計品目表は、商品の特性や用途に応じて第21部第97類まで細かく分類されています。
確認する際に重要なのは、関税率表が定期的に更新される点です。主な改正は毎年1月1日に行われ、さらに4月1日にも税率の見直しが実施されます。そのため、輸入取引を行う際は、常に最新の関税率を確認する癖を持ちましょう。
適用される関税率は、基本税率、WTO協定税率、EPA税率、特恵税率など複数存在するので、適用条件や優先順位を理解した上で、最も有利な税率を選択する必要があります。
また、日本の実行関税率表は毎年1月1日に改定され、現在の最新は2024年版です。EPAやFTAの影響で税率が変動する場合があり、年度途中の改定も注意が必要です。税関ウェブサイトで最新情報を確認しましょう。
実行関税率表(2024年1月1日版)
https://www.customs.go.jp/tariff/2024_01_01/index.htm
関税の申告方法
関税の申告方法には、申告納税方式と賦課課税方式という2つの基本的な方式が存在します。
方式 | 説明 |
申告納税方式 | 一般的な輸入取引で採用される主要な方式 |
賦課課税方式 | 特定の条件下で適用される例外的な方式 |
近年では電子申告システムの導入により、申告手続きの効率化が進められていますが、正確な申告のためには各方式の特徴と適用条件を十分に理解することが重要です。これから、具体的な申告方法と納税義務について詳しく説明していきます。
輸入する場合
輸入取引における関税の申告は、原則として申告納税方式が採用されます。申告納税方式は、輸入者が自ら課税標準を計算し、それに基づいて税額を算出して申告を行います。
基本的に輸入申告と納税申告は同時に行う必要がありますが、税関長から承認を受けた特例輸入者については、輸入許可後に納税申告を行うことが可能です。
また、一定の条件下では賦課課税方式が適用されることもあります。以下が条件の一例です。
- 入国者の携帯品や別送品
- 20万円以下の郵便物または寄贈品
- 相殺関税や不当廉売関税の場合
部署の担当者などであれば、自社の取引がどちらの方式に該当するかを正確に判断し、適切な申告手続きを行う知識が必要になるでしょう。
関税の支払い義務
関税の納税義務は、原則として貨物を輸入する者が負います。納税義務は輸入の許可前に行う必要があり、適正な輸出入管理と公平な貿易取引を確保するための要件です。
納付方法については、近年のデジタル化に対応しリアルタイムの口座引き落としやインターネットバンキングを利用した電子納付など、複数の選択肢が用意されています。
特に注目すべき制度として、関税等の納期限延長制度があります。この制度では、事前に担保を提出することで、輸入許可日の翌日から最大3ヶ月以内まで納期限を延長することが可能です。この制度は資金繰りの観点から輸入者にとってメリットが大きい選択肢となっており、先方が合意した担保を提供できれば、規模や取引実績に関係なく利用できます。
関税でよくあるトラブル
税関における輸入通関では、申告内容の誤りや不備により様々なトラブルが発生する可能性があります。トラブルは、企業の信用やコンプライアンスに大きな影響を与える可能性があるので、事前の予防と適切な対応が不可欠です。これから具体的なトラブル事例とその対応策について解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
申告漏れ
申告漏れは輸入通関において最も一般的なトラブルの一つです。下記で、典型的な事例をご紹介します。
事例 | 問題 |
インボイスに記載された決済金額以外の貨物代金の申告漏れ | 追加的な支払いや値引きが発生した場合に起こりやすい問題 |
輸入者が無償で提供した材料費用の申告漏れ | 実際の取引価格に含まれるべき要素が正確に反映されていない |
また、処分または使用に制限がある貨物の課税価格の申告誤りや、意図的な低価インボイスによる輸入申告なども起こり得るトラブルです。これらの申告漏れを防ぐためには、社内での確認体制の確立と、必要に応じた専門家への相談を心がけましょう。
関税の減免税制度の活用
関税定率法に基づく減免税制度は、特定の状況下で輸入者の税負担を軽減する制度です。主要な制度の1つとしては、商品の変質や損傷が生じた場合の減税または戻し税制度です。例えば、海上輸送中の事故で商品が損傷した場合、その損害の程度に応じて関税が減額されます。また、加工や修繕のために一時的に輸出された貨物が再輸入される際の減税制度も設けられています。
製造用原料品の減税または免税制度は、国内製造業の発展を支援する目的で設けられ、特定の原材料に対して関税の軽減措置が適用されます。さらに、1年以内に再輸出される予定の貨物には再輸出免税制度が適用され、一時的な輸入に対する柔軟な対応を可能にしています。
事後調査への対応方法
税関による事後調査は、輸入申告の正確性を確認するための手続きです。事後調査に対応するには、事前の準備から調査後のフォローまで、柔軟的な対応が求められます。特に重要なのが輸入申告内容の定期的なチェックで、これには以下の保管が不可欠です。
- 関税関係帳簿
- 通関関係書類
- 経理関係書類
法令では最低5年間の保管が義務付けられていますが、それ以上の期間保管しておくと安心です。また、調査が実施される際には、税関からの事前通知に基づき、必要書類を速やかに提示できる体制を整えることも重要です。不明な点がある場合は、通関業者や税理士などの専門家に相談し、アドバイスを受けることで、調査をスムーズに進行させることができるでしょう。
まとめ:初めての方だと難しい関税の基礎知識
ここまで本記事を読んで頂いた方は、関税の基礎知識について理解できましたでしょうか?
慣れ親しみのない言葉が多いと思うのですが、関税は国際貿易において不可欠な制度であることは、避けられません。
特に、仕組みや計算方法は複雑で、申告漏れや計算ミスなどのトラブルが発生しやすい分野です。初めて海外取引を行う事業者にとって、関税の手続きは大きな課題となるでしょう。
そこで、このような課題を解決するためには、専門家のサポートを受けることが重要です。
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関税に関するご質問やご相談がありましたら、ぜひお気軽にご相談くださいね。